手漉き和紙と言えば、山梨県の甲州和紙、岐阜県の美濃和紙、福井県の越前和紙、鳥取県の因州和紙、四国の伊予和紙が有名です。
しかし、他にもいろいろとあり、広島県、福山市の和紙もありますし、高品質の和紙(料紙)もあります。
和紙は国際的にも質の高い評価を得ており、強度と優れた保存性が注目されています。
展覧会出品のための書道用の和紙についてですが、原料は、楮、三椏、雁皮、麻が主なものです。
和紙の製造において材料の大半は楮を使用しています
繊維が長く絡みやすいのでもんでも破れない強靭さを持ち、幅広い製品に用いられています。
雁皮(がんぴ)繊維が短く、紙の表面は滑らかで美しい仕上がりになりますので、かな料紙や写経用紙など、細字の創作に適しています。
三椏(みつまた)は、雁皮に似て繊維が短いので印刷に適し、大蔵省が栽培を推奨した。葉書や便箋などに用いられます。
麻(あさ)は古代を代表する和紙の原料ですが、扱いが難しく、三椏の台頭に依って使用量が減少しています。
ただし、重厚で風格のある仕上がりが特徴です。
それと和紙作りに欠かせないのが水です!
原料の楮を水に晒して洗う工程や、流し漉きでは良質な水が必要となります。
ですので、和紙を製造する地域は湧水のある地域が殆どです。
カルシュウムやマグネシュウムの含有量が少ない軟水が適しています。
私達が普段使用している水道水で和紙を作ろうとすると、水道水には塩素が含まれいるため、時間の経過と共に数年後には、紙が赤く変色してしまうそうです。
書道用の和紙は、手漉き和紙が殆どですが、最近は機械漉きもあります。
和紙の中でも創作に使用する時は、個人的な主観ですが、和紙の表面に膠(にかわ)を施した、(具引きをした和紙)が面相筆との抵抗がなく書き易いです。
書道用には膠(にかわ)を施した和紙の方が書き易い
膠(にかわ)とは牛の皮を煮て作った粘り気のある液体です。
和紙の表面に膠(にかわ)を施してない和紙も有ります。
そういった和紙を使う場合、鼬(イタチ)面相筆は先が鋭く、細字を書くときは和紙と筆の摩擦が酷くて筆を取られて、なかなか自分の意志通り筆を運ぶ事ができません。
膠を施していない和紙に書こうとして何回も失敗した経験が私にはあります。
書道初心者の頃は膠(にかわ)具引きが施して無い和紙とも知らず、書いていくうちにあまりにも筆との摩擦が酷いので、失敗して漸く具引きが施してないことに気が付きました。
やはり、紙の表面に膠(にかわ)を施した和紙のほうが、細字を書く時は抵抗なく筆を運ぶ事ができます。
鋭い鼬(イタチ)毛の面相筆が、細いだけに和紙との摩擦が最小で済みます。
膠(にかわ)の施してない和紙は筆との摩擦が大き過ぎて、抵抗を感じますので自分の意志とは裏腹な線が出来て書きづらいです。
書いている時に、和紙に穂先を取られて、自分の意志通りの線を表現できません。
膠(にかわ)処理なしの和紙であと1種類書き易いものが有ります。
正絹と言う種類の和紙で、細かい微かな碁盤の目の凹凸のあるものです。
この和紙も細字を書くには、抵抗なく書き易いです。
違和感が無いと言った表現が相応しいと思います。
和紙が良質で筆の摩擦が少ないと、違和感なくイメージ通り創作できます。
細字用の創作用の和紙には透かしの図案が入っています
透かしの柄は、春夏秋冬、四季折々の風景が入って、風流な柄の物が有ります。
春は草木の、新芽等の図案。
夏場であれば水辺の葦、よし、蓮に蛙や水の流れの図案で、涼を呼ぶ印象の物。
秋は代表的な物は紅葉、ススキ等。
冬は細雪に竹、松、雀に竹。
いろいろな情景描写の透かしの図案の和紙が豊富で、色彩も当然墨で細い字を書く訳ですので、濃い色では有りませんが、水色から、淡い黄色、薄い灰色、薄茶色と多種多様な和紙が豊富に有ります。
金粉、銀粉、金箔、銀箔入りの和紙の豪華絢爛さは言うまでも有りません。
価格はサイズは縦45cm横60cmで2,000円前後です。
その和紙に清書をした後で、3枚と4枚目は半分糊で繋ぎ合わせます。
そうして1枚の作品の出来上がりです。
後は専門の表具屋で裏打して、額装して漸く作品の完成です。
その後、作品展の審査に出品します。
書道は日本文化の一端ですが、全国の公募展に出品する事も大切ですが、書く以前に和紙で日本の四季折々の情景を、堪能出来る事もかな書道の利点です。
作品を創作するには、まず練習用紙に同じ和歌或いは、短歌、俳句、詩集、万葉集、源氏物語、枕草子等の古典や近現代詩集等から、題材を選び繰り返し反復練習をします。
同じ題材を100枚練習します。
書道では和紙と筆の相性は大切です。
筆についても、個人の視点で違うと思いますが、1回創作するのに5本単価は1本2,500円前後の筆を用意します。
面相筆は日本画や水彩画等でも使用する多用途の筆で、非常に細く鋭い穂先を持つ日本の線描筆で、超極細筆を使用します。
種類は鼬毛から狸、馬等の種類も豊富にありますが、細字では鼬毛の面相筆で、熊野筆等使い易い筆が日本全国至るところにあります。
面相筆は穂の付け根が2段になっているのが、一般的です。
しっかり握って細かく穂先を動かせるのが特徴です。
日本画や水彩画、絵手紙とか写仏画等幅広く使用出来ます。
他にも数え上げればきりが無い程に数多くありますが、鼬毛の細字用の筆が書き易いですので、個人的に使用してみて、違和感のない書き易い筆を、自分で探す事も良い体験になると思います。
それに初心者は穂先の長い筆は扱いにくいので、短めの筆を使う事をお勧めします。
筆を扱い慣れた人でも、新しい筆は腰が無くて書きにくいので、事前に準備した筆を、初めて使う前に市販の墨汁を2、3回繰り返し付けて、1週間程、乾燥させて筆に芯を作ります。
この方法は、個人的な私の細字筆の使い方です。
かな書道は当然、万葉かな(変体かな)でしかも連綿(仮名を縦に続ける)で表現しますが、例えば「あ」にしても安全の(安)、阿波の(阿)、亜細亜の(亜)、悪の(悪)、愛の(愛)、と沢山有ります。
当然文章の全体の流れから、縦長の仮名が合うか短い仮名が合うか判断して、連綿に相応しい仮名を自分の長年の経験から選んで表現します。
そうして行間、字間、全体の調和を考慮して、散らし等を試行錯誤しながら、創作していきます。
そうして創作する迄には、基本の「いろは」に始まって、古典の臨書を反復練習をします。
漢字の中国の唐時代以降の古い名筆を『古典』と言いますが、日本の平安時代から鎌倉時代の和様の名筆を『古筆』と言います。
僧による名筆は墨蹟と呼ばれ区別されています。
手本となる古筆の中で平安時代の三色氏と言えば、書道の心得のある人であれば小野道風の『継色紙』、紀貫之の『寸松庵色紙』、藤原行成の『升色紙』がありますが、この色紙の総称が三色氏です。
他に古筆切れと言う物もありますが、この古筆は一つの巻物がいくつかに切断されたものです。
それが各所に分蔵された場合は、元は同じものである認識から、もとの所蔵者、伝来の地名、字すがた、料紙等の特徴にちなんで名付けられています。
日本三筆は平安時代の著名な能書家で、空海、嵯峨天皇、橘逸勢、ですが、日本三蹟は小野道風、藤原佐理、藤原行成です。
こちらも平安時代の能書家ですが、それぞれの年齢に数十年の開きがあります。
古筆は関戸本を基礎に反復練習しました。
古筆には、基本的に高野切れ第三種、関戸本古今集、粘葉本和漢朗詠集等があります。
その古筆を原寸臨書して、目と腕を鍛えます。
原本を見ないで書けるぐらいの練習が必要です。
私は古筆の臨書は関戸本を基礎として学びました。
それは当然師事した先生の勧めですが、関戸本古今集は、『古今和歌集』を藤原行成が書写したものですが、藤原行成は日本三蹟の一人です。
関戸本古今集はあらゆる美の要素が包含されています。
字形が良く整っていて緩急、抑揚の変化に富んだ動きのある書で、連綿や放ち書きの交用など、墨継や運筆の練習にも効果的なお手本です。
それを見ないでも書ける事が必要です。
関戸本は、加賀前田家に伝来し、明治15年(1882年)に名古屋の豪商、関戸家の所蔵となったために「関戸本」と称されました。
そのために「古筆」の臨書もそれぞれの古筆に合わせて「サイズ」や「配色」を考えた「練習用」と「清書用」の紙があります。ですので練習する時も、原本に合わせた色遣いの物を用意した方が賢明です。
練習用でも支障はないですが、「末永く取って置きたい作品」として制作するなら「清書用」がお勧めです。
書道に限らず基礎をしっかり学ぶ事は大切な事です。
墨には「油煙墨」と「松煙墨」がある
墨にしても市販の墨汁で模造紙に書く訳では無いですので、固形の墨1本5,000円位の墨を用意して、硯で10分位擦ります。
細字は、まず市販の墨汁では創作できません。線を描いた時に判別は出来ますが、線が伸びないので墨汁で書く事は難しいと思います。
墨には「油煙墨」と「松煙墨」があります。
濃く擦って使うと色の違いは感じませんが、これを水で薄めると、青系から茶系、赤系など微妙な色の違いが現れます。
「松煙墨」黒から青系、「油煙墨」は黒から茶系の色を持っています。
固形の墨は煤を粘着性である膠(にかわ)で練り固めた物です。膠(にかわ)で練り固めたと言う点では同じですが、煤が違うのです。
「松煙墨」はその名の通り、松の樹皮を燃やして採った煤から出来ています。
一方、「油煙墨」は、菜種や胡麻などの油を燃やして採った煤からです。
切り口を見てみると油煙墨には光沢があります。
松煙墨には光沢がありません。
こういったところは固形墨を区別するヒントにもなります。
かな書道には粒子が細かく伸びの良い油煙墨がお薦めです。
こだわるなら固形墨の和墨だとなお良いです。
創作においては、同じ題材を連日繰り返し練習して創作していきますが、100枚同じ詩集、選んだ題材を書く事で慣れていきます。
そうして繰り返し練習して作品として仕上げる時は、時間に余裕を持って、神経を研ぎ澄まして書き上げまず。
昼間でも集中できる環境であれば問題ありませんが、深夜の方が集中出来ると思います。
勿論連日練習していますし創作する迄には、100枚くらい練習していますので、書く事に慣れていますが、完璧な状態で神経を集中して書きます。
それでも心臓の鼓動の高鳴りは感じますが、筆を執る手は絶対に震えません。
それは日頃の訓練で書きなれている事と、筆と自分の腕が一体となっているからにほかなりません。
真剣に書いていると筆が、自分の腕と手の一部みたいな錯覚に陥ります。
緊張感で心臓の鼓動が聞こえます。
その時が創作の絶好の機会です。
かな書道は金箔、銀箔の散らした上質の料紙に創作します。
かな書道における創作は、字間や行間と散らし書きの構成も大事です。
そう言う事を念頭に置いての清書の瞬間が、書の醍醐味のように感じています。集中力を養うのにも大いに役立ちます。
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